DIORE CLINIC
4.8(400+)
診察室でウルセラ、シュリンク、クールソニックのような超音波リフティングの相談をしていると、患者さんが最もよく口にされる言葉があります。
「前回は少し弱かった気がします。今回はもう少し強くしてください。」
「痛くないなら効果がないということでは?」
「ショット数をもう少し増やしてください。追加で払ってもいいので。」
お気持ちはわかります。施術費を支払ったのだから、しっかりした効果を実感したいと思うのは当然です。ですが、臨床的に見るとこの依頼は患者さんにとって最も危険な依頼の一つです。
なぜなら、超音波リフティングには薬のように治療域(Therapeutic Window)という概念があり、この範囲を超える強さは短期的には「強い効果」に見えても、中長期的には回復不能な損傷を残すからです。
今日はディオレ医院の代表院長として、患者さんが普段はなかなか聞けない話を整理してお伝えします。
ウルセラ(Ulthera)、シュリンク(Shurink)、クールソニック(Coolsonic)のようなHIFU(High-Intensity Focused Ultrasound、高密度焦点式超音波)機器は、すべて同じ原理で作動します。
標的深さはカートリッジによって異なります。
💡 核心ポイント: HIFUの効果は「組織を焼く」ことではなく、計画された微小損傷によって自然回復反応を促すことです。つまり、回復可能な範囲内でのみ効果に意味があります。
薬理学には治療域(Therapeutic Window)という重要な概念があります。
同じ薬でも、用量によって結果はまったく変わります。
| 用量区間 | 結果 |
|---|---|
| 無効区間 (Sub-therapeutic) | 効果なし |
| 治療域 (Therapeutic Window) | 望む治療効果を発揮 |
| 毒性区間 (Toxic Range) | 副作用・損傷発生 |
| 致死区間 (Lethal Range) | 回復不能な損傷 |
例えばアセトアミノフェン(タイレノール)は適量では安全な鎮痛剤ですが、過量摂取すると肝臓に回復不能な損傷を与えます。同じ薬、同じ成分でも結果は正反対です。
超音波リフティングも同じです。
| エネルギー区間 | 組織反応 | 臨床結果 |
|---|---|---|
| 弱すぎる | MCP形成不足、コラーゲン刺激不十分 | 効果なし |
| 適正区間 | 調整された微小損傷 → 自然回復 → 新生コラーゲン | リフト効果 |
| 過度な区間 | 広範な凝固壊死、回復能力を超過 | 不可逆的損傷 |
問題は、患者さん自身が施術の強さがどの区間にあるか体感できないことです。痛みが強いからといって適正区間とは限らず、痛みが少ないからといって無効区間とも限りません。痛みと効果は比例しません。
ここからは、患者さんが最も知らない領域です。「強く受けたとき」に実際に何が起こるのかを臨床で見ると、次のような損傷が蓄積します。
最もよく見られ、最も深刻な不可逆的損傷です。
SMAS層(4.5mm)を標的とするカートリッジが深すぎたり、強すぎるエネルギーで、頬骨上・頬内側の脂肪パッドに多くのショットを照射すると、その下の皮下脂肪層自体も一緒に加熱され、脂肪細胞が永久的に死滅します。
皮下脂肪は一度失われると自然再生しません。結果は次のとおりです。
特に30~40代の痩せ型女性に多く見られます。本人は「より引き締まった輪郭」を求めて施術を受けたのに、結果としては老化の核心的特徴であるmidface volume loss(中顔面ボリューム喪失)が加速するという逆説が起こります。

これが海外の学術誌で報告されるHIFUの最も深刻な合併症で、回復させるにはフィラーや脂肪移植で再度補うしかありません。一度失われた脂肪組織そのものは戻りません。
顔面神経、特に側頭枝(temporal branch)と下顎縁枝(marginal mandibular branch)は皮膚の近くを走行しています。この部位に4.5mmカートリッジで過度なエネルギーを照射すると、神経の髄鞘(myelin sheath)が熱損傷を受けます。
症状は次のように現れます。
多くの場合は数週間~数か月で回復しますが、まれに永続的麻痺に至るケースも学術誌で報告されています。
真皮層には皮膚再生を担う線維芽細胞(fibroblast)と幹細胞(MSC, mesenchymal stem cell)が分布しています。これらがコラーゲンとエラスチンを合成する中心的な細胞です。
問題は、これらの細胞には再生能力に限界があることです。回復サイクルを無視して短い間隔で強いエネルギーを繰り返し照射すると、幹細胞プールが徐々に枯渇します。
臨床的には次のように現れます。
これを「耐性がついた」と表現する方もいますが、正確には再生資源が枯渇した状態です。
調整された微小損傷は正常なコラーゲンを作りますが、過度な損傷は異常な瘢痕性コラーゲンを作ります。
症状:
こうした変化は一度定着すると、外科的剥離(release)以外ではほとんど元に戻せません。
最も微妙ですが、長期的には重要な損傷です。繰り返される過度な熱損傷は組織に慢性低度炎症状態を引き起こし、これは逆説的に皮膚老化を加速させます。
慢性炎症は:
つまり、「リフティングのために受けた施術」が'inflammaging(炎症老化)'を引き起こし、むしろ肌を早く老けさせる場合があるということです。
患者さんが施術の強さが適切かを自分で判断しにくい理由がここにあります。
| 患者が感じること | 実際の意味 |
|---|---|
| 施術中の痛みが強い | 適正深度に届いたことかもしれないし、標的外組織への刺激かもしれない |
| 施術後に顔がむくむ | 正常反応かもしれないし、過度な損傷かもしれない |
| 施術後数日間うずく | 自然な回復反応かもしれないし、神経刺激かもしれない |
| すぐに顔が小さく見える | コラーゲン収縮かもしれないし、単なるむくみかもしれない |
患者さんが「強く受けた」と感じた施術が、実際には標的層を正確に捉えた効果的な施術かもしれず、逆に標的外組織へエネルギーが誤って入った損傷施術かもしれません。 これを見分けられるのは施術者の臨床判断だけです。
最も危険なのは、過度な施術の損傷がすぐには見えないことです。
では、安全で効果的な施術とはどのようなものでしょうか。ディオレ医院で適用している原則を共有します。

同じ30代女性でも、次によって適正エネルギーはまったく異なります。
カウンセリングなしに「標準ショット数」で一律適用する施術は危険です。
4.5mmカートリッジを広範囲に使うことが無条件に良いわけではありません。各深さに応じて適切に配分し、自然な結果を作る必要があります。
特に4.5mmカートリッジは、頬内側の buccal fat pad の位置や目の下の SOOF、頬骨上の malar fat pad領域では慎重に照射するか回避する必要があります。この領域の脂肪細胞損傷が、上で述べた顔面脂肪萎縮の主因です。
コラーゲンのリモデリングサイクルは約6か月です。このサイクルが終わる前に再び施術すると、累積損傷だけが増え、追加効果はわずかです。
私は診察室で患者さんにいつもこうお伝えしています。
「適正なエネルギーで十分な効果は出ます。痛みを我慢してさらに強く受けることは、効果を増やすのではなく損傷を増やすことです。」
Q1. では、ウルセラよりシュリンクのほうが安全ですか?
機器自体の安全性よりも、施術者のエネルギー設定と深さの判断のほうがはるかに重要です。どの機器でも過度に使えば危険で、どの機器でも適正に使えば安全です。
Q2. 一度に1,000ショット以上受けると危険ですか?
ショット数そのものより、エネルギー出力、深さ、照射部位の組み合わせが重要です。ただし一般的に、1回の施術でSMAS層に過度なショット数を入れることは推奨されません。
Q3. すでに何度も受けましたが、今からどうすればいいですか?
以前の施術歴と現在の肌状態を評価してもらう必要があります。次回の施術まで十分な間隔(最低1年)を空け、もしすでに脂肪萎縮の初期兆候があるなら、リフティングよりもボリューム補強(フィラー、スキンブースター)が優先になる場合があります。
Q4. 他院で「今回はもう少し強くやりましょう」と勧められましたが、受けてもいいですか?
医療スタッフと相談して決めるべきです。ただし一般的には、「毎回強度を上げる方向」の施術設計は医学的に推奨されません。強度を上げるより、適切な施術計画と間隔のほうが重要です。
Q5. すでに脂肪萎縮が起きたようですが、回復できますか?
HIFU自体では元に戻せません。ただし、フィラー、自家脂肪移植、コラーゲンブースター(スカルプトラ、ジュベルックなど)を活用してボリュームを補う補完戦略は可能です。正確な評価が先です。
Q6. リフト効果をもっと出したい場合はどうすればいいですか?
HIFU単独でさらに強く受けるより、他のモダリティとの組み合わせのほうがはるかに安全で効果的です。RFリフティング(サーマージ、インモード)、糸リフティング、スキンブースターを適切に組み合わせれば、それぞれの適正域を守りながら相乗効果を得られます。
美容皮膚施術の本質は、調整された損傷を通じた自然回復の誘導です。この定義の中で最も重要な言葉は「調整された」と「回復可能な」です。
患者さんのお気持ちは理解できます。費用を払ったのだからしっかり効果を見たいし、「強く受けた」という感覚があってこそ安心できる気持ち。ですが、施術者が患者さんの希望に合わせて適正域を超える強さで施術することは、患者さんの長期的な肌の健康に責任を持つ行為ではありません。
ディオレ医院では、患者さん一人ひとりの肌状態、骨格、脂肪分布、既往施術歴を丁寧に評価したうえで、その方にとって最も安全で効果的な適正域を設計します。時には「今回の施術はおすすめしません」とお伝えすることが、施術すること以上に重要な判断だと考えています。
リフティングは、一生にわたって受ける施術です。今日の強い一回が5年後の顔を左右します。どうか「強く受けること」より「正確に受けること」を選んでください。
ℹ️ 免責事項
個人の肌状態により結果は異なる場合があります。正確な診断とカウンセリングは、美容皮膚科の専門医療スタッフにご相談ください。